会員寄稿
学校心臓検診適正化への協力・その後
近畿大学附属高等学校校医
帝塚山学院泉が丘中学校・高等学校校医 篠原 徹
昨年7月、大阪私立学校校医会「令和2年度年報」に学校心臓検診適正化への協力と題し短文を載せていただきました。
私立学校においては学校独自の考え方などもあり、学校心臓検診の実施方法が一定していません。実施費用の面から公立校では実施が難しい「運動クラブ入部者に対する検診(スポーツ検診)」を実施する学校がある反面、授業時間との調整が難しく学校心臓検診を学校内で実施せず入学までに各自近医で済ますように指示する学校もあるなど、検診自体に格差が存在することを指摘しました。森口久子会長のご尽力などもあり、この1年間でゆっくりではありますが格差解消に向け動きだしています。
学校心臓検診の目的を達するためには「学校心臓検診ガイドライン(日本循環器学会)」に準ずる実施方法が望ましいですが、少なくとも以下のような点を考慮に入れる必要があると考えます。
- 1)検診を担う医療機関(いわゆる業者)を的確に選ぶこと。学校心臓検診においては極めて重要な点です、学校心臓検診に精通した業者に依頼したいところです。このような業者では心電図の判読医も学校心臓検診に精通した医師が行っています。過剰診断や過少診断を避けると経験的には心電図による有所見者(抽出者)が4~5%程度になります。入学前に各自で医療機関を受診させると中には学校心臓検診に不慣れな医師もおり、過剰診断、過少診断を産むことになります。
- 2)私立学校では学内で2次検診を実施していない場合が少なくありません。心電図有所見生徒が受診する医療機関が適切であるかは学校心臓検診の適正化にとって重要です(2次検診を精通した業者さんに依頼している場合はこの点も解消されます)。学校へは受診結果を返してもらわなければいけません。「異常なし」や「正常範囲」の場合はよいのですが、「所見がある」ときに妥当な管理区分であるとともに、管理区分表(管理表)に今後の指針が記載されていなければなりません。次回いつ、どのような形での追跡が必要であるかが明記されている必要があります。養護教諭が返ってきた管理表を見たとき、納得できる(=今後の対応に困らない)管理表であることが重要であり、そのような管理表を書ける医療機関が学校心臓検診を担う医療機関として適切だといえます。
- 3)各生徒は自分の所見を知る権利を持っています。学校医は専門外であっても返ってきた所見をそれぞれの理解状況に応じて生徒達に説明しなければならない義務をもっています。そのためには学校医の努力も要求されます。