大阪私立学校校医会

講演会

令和2年度大阪私立学校保健大会における講演会の報告

大阪私立学校校医会 副会長 福本 敏子

 令和2年11月26日に大阪私学会館において、大阪私立学校保健大会が開催され、講演会として医療法人明和会 琵琶湖病院 思春期青年期治療部長の稲垣貴彦先生が「子どもによくみられる精神疾患と不登校生徒への対応~教育と医療面から子どもを見つめるために~」と題してご講演くださいましたので、ご報告させていただきます。

 稲垣貴彦先生は滋賀医科大学をご卒業後、児童精神疾患のパイオ二アとして永くご活躍をされておられます。稲垣先生はご講演の中で以下のように述べられました。

 子どもの精神的不調については家族以外で最初に接するのは教育現場、すなわち教員の方々である。子どもの精神疾患として発達障害はよく知られているが、実際の有病率は「自閉スペクトラム症」で約1.5%、「注意欠陥・多動症」で約5%であるが、精神疾患の中で「うつ病」は女児は約1.6% 、男児は約7%と発達障害より、精神疾患の有病率の方が高いという現実がある。つまり不登校の多くは発達障害ではなく、精神疾患によることが多い。発達障害と精神疾患の鑑別にあたっては①幼少時にはその症状を認めない ②いつからその症状が出現しているかがわかるという2点が重要である。この2点を満たす場合が精神疾患の発症を意味している。

 子どもの精神的不調について学校という教育現場に求められるのは①精神的不調に気づく ②医療受診を推奨し治療的介入をするという2点である。治療の中で療養環境の調整と心理療法は教育現場でも関与できる治療である。今後は子どもたちのメンタルヘルス問題に学校教員の方々が果たす役割はますます増加すると予想される。

 以上の事柄について、多くの症例を交えながら、わかりやすく講演していただきました。稲垣先生のご講演から、学校で子どもたちに関わる学校医、養護教諭、担任教師などの学校関係者の責任を再認識させていただき、子どもたちの心の問題をできるだけ早く発見し、適切なケアに結び付けてつけていきたいという思いを強くいたしました。